イラストSS

　再現性東京202X：希望ヶ浜。
　色めく一日ではあるが――そうは行かないのが同人作家の辛いところである。
　原稿用にとローレットに頼み込んで借りたというアパートの中には無数のペンタブレットが設置されている。
「一体誰が、早めに入稿できたからコピ本作ろうとか言ったのか―――！」
　悲痛な叫び声が響き渡るその室内でリディアは肩を竦めた。
　そう、余裕入稿したという彼はウキウキとした様子で他の原稿に取り掛かった。
　残念ながら……そう、残念ながら『筆が乗ってしまって』今からでもオンデマンド本に差し込み出来そうな印刷所を見付けてしまったのだ。
　コピー本では納まりきらない分量をこれからきちんとした本にしなくてはならないと修羅場真っ最中の彼の手伝いにやってきたは良いが食事もロクには取ってくれない。
　リディアは困り果てながら食欲そそる餃子を作ることに決めた。
「ケーキも買ってきましたし、餃子も焼きましたよ。休憩しませんか？」
　明るく微笑み、甲斐甲斐しくお世話をするリディアは原稿ばかりだと苦しくなりますからね、と注釈を付けた。
　恋人――なんて、言えないけれど異性の仲にが遠くても友人として少しでも距離が近付けば嬉しい。
　そんな乙女の心を揺らしながらリディアはちょこりと隣に腰掛けた。
「まずは食事からですよ」
　二人揃って、頂きます！


　＊SS担当者：夏あかね