イラストSS

　まんまるなお月様が昇る夜、しんしんと降る雪に紛れて、赤い服を着たサンタがソリに乗って空を飛ぶ――そんな噂もある。一部の好奇心旺盛な人々は、そんなサンタを一目見たいと夜空を眺めてその人物を探す。しかし、見当たらない。
　必死に探したところで見つかるわけもないか、と諦める人たち。本来は、眠っている子供たちにそっとプレゼントを置く素敵なおじ様なのだ。探すのは無粋か、と帰路につく。
　そんな彼らが自分の家の玄関扉に立ち、鍵を開けようとしたところで、ふっ、と手元が暗くなりすぐに明るくなる。何かが自分の上を通ったのだろうか。疑問に思い、夜空を見上げる。――そこにいたのは、
「――サンタっ！？」
　トナカイが引くソリに乗って、空を飛ぶ赤服のおじ様。その背には、プレゼントの入った大きな白い袋が……白い、袋？　なんだか、もぞもぞと動いたような気がする。目をこすりもう一度見ようとするも、既にサンタは居なくなっていた。
　……まぁ、あの白い袋は風に靡いて生き物っぽく見えただけだろう。うん。なんだか、顔があったような気もするが、うん。
　無理矢理納得すると、彼らは鍵を開けて家の中へ入った。
　( ᐛ )＜めりー！
　なんて声が、遠くから聞こえたような気がするが、きっと気のせいだ。

　※SS担当者：萩野千鳥