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神倉 五十琴姫の彁によるおまけイラスト
神倉 五十琴姫の彁によるおまけイラスト
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シャイネンナハト、だったか。神威神楽ではそんな風に呼ばれていたわけではないから、出掛けの誘いを貰ったときは思わず瞬いてしまったのだったっけ。
くぁ、とあくびをこぼしながら、まだ体温の残る布団から身を起こす。
待ち合わせまではまだ時間がある。勿論早起き。女の子の身支度には時間がたっぷりと必要だから。
雲の隙間から漏れた陽光はまだ温みを帯びてはいなくって。仄かに光る雪を窓越しに眺めながら、椿油をよく染み込ませたつげ櫛で丹念に、長い射干玉の髪を梳かしていく。
今日のために準備しておいたのだ。箪笥の奥で眠っていたトッパー・コート。ロングスカートは裾上げをして床に擦らないように気をつけたし、靴擦れしないようにこっそりヒールパンプスを履き慣らす練習だってした。
温かいふわふわのマフラー、丸みを帯びた帽子も、きっと今日を待ちわびていたに違いない。
期待をしているわけじゃあないけれど。胸の奥の淡い想いは、まるで雪が光で染まるように色付いていく。
気付いてくれたなら、何よりも嬉しいから。だから今日は、いつもよりも念入りに。
緩く結んだ三つ編みも練習の甲斐あってかこれまでで一番の出来。さぁ、後は。
(……そなたは気付いてくれるのかのう)
とびきりの姿を、あなたに見せるだけ。
※SS担当者:染