イラスト詳細
レッド・ミハリル・アストルフォーンの洗井落雲によるSS用イラスト
レッド・ミハリル・アストルフォーンの洗井落雲によるSS用イラスト
イラストSS
「『慈悲』、あるいは『救い』とは何か? ですか」
そういうのは『幻想大司教』イレーヌ・アルエ――頷くレッドに、イレーヌは、そうですね、と前置きをしてから続けた。
「一般的なことなら今すぐにでも申し上げられます。
ですが、あなたが求めているのは、そうではないのでしょう。
では――極論を。
今私が、不治の病により激苦の中にあるとします。
私は今すぐ殺してくれ、とあなたに頼みます。
殺すことは慈悲、或いは救いですか?」
「それは――」
どう、なのだろう。
人は命あってだ。命を失えば、あらゆる可能性が失われる。もしかしたら、明日――治療薬ができるかもしれない。
だが、その苦痛に耐えるのは、ほかならぬ本人だ。本人が、その可能性を捨てでも、今すぐの安楽を求めた場合。
殺してやるのが救いか。生かしてやるのが慈悲か。
「私には、すぐに答えを出すことはできません。人前では、延命させましょうというかもしれませんけれどね。
でも、それは、現社会の生み出した社会道徳に伴う慈悲です。では、もっと根源的な、人としての慈悲とは」
なにか――と。
イレーヌは尋ねる。
むむむ、とレッドは唸った。
「うーん……」
「今すぐに答えが出る問題ではありません。これは永遠に悩み続けなければならない問題なのですから」
これは、難解な相手に難問を吹っ掛けてしまったかもしれない。長い問答になりそうだった。
だが、この日の言葉のやり取りは、一つの、何か一歩を踏み出したような――そのような力を、レッドに与えてくれるのだった。
SS担当:洗井落雲