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本心は杯に溶けて
本心は杯に溶けて
イラストSS
こんこん、と軽く叩いて煙管の中の灰を落とす音が思いの外響くなと、縁は思う。
シャイネン・ナハトの夜、昼過ぎから降り出した雪はしんしんと振り続け、縁側から望む景色を雪化粧で染め上げる。隣に座る情報屋は見えているのかどうなのか。包帯に包まれた目を雪景色にむけながら、お猪口を傾けている。
知り合って暫く経つが、この情報屋の底というものは見えない。嘘はつかない。それは確実だ。だが、真実をもかの情報屋は伝えることもない。
「いい酒だな」
確かにそのとおりだ。この酒はとてもいいもので味も最高だ。
そう、この情報屋とのばかしあいがなければ素直にその味に舌鼓をうてるのだろう。ここで泥酔してしまえば何がおきるかわからない。それはお互い様だ。お互いに口をつけてはいるが量は一向にへっていかない。
「だろう、結構したんだぜ?」
腹の探り合いは続く。水面下の心理はお互いにみえない。
「雪は全てを覆い隠す。まるで■■■のようだな」
リュグナーが言った言葉が聞き取れなくて、もう一度聞き返すが彼は答えない。きっと意味はない、でまかせの言葉だ。だというのになぜか心に引っかかる。それが情報屋の手練手管というのは理解しているのに。
「そうかい」
だから一言。緑はなにもなかったかのように答えた。