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たまには一緒に…
たまには一緒に…
イラストSS
インク・ブルーの夜空に浮かぶ月は優しげな微笑みを浮かべていた。
月光に照らされて暗い森の中に佇む墓石が仄かに浮かび上がる。
人を寄せ付けない森は鬱蒼と木々が茂り、獣道が墓石までの道標だ。
「ふう……」
暗い森の中に置いて、尚黒く。
姿を表したのはノア・マクレシアだった。
世界は大きく動き出したというのに、この場所は相変わらず時を止めたように存在していて。
ノアはいつもの様に『友人』に凭れ掛かった。
此処の所、何かと用事が多く来る機会も減っていた様に思う。
街の喧騒など程遠いこの場所はノアと『友人』だけのものだ。
「久しぶり」
言いながらロイヤル・パープルの酒瓶を傾けグラスに注ぐ。それを『友人』の前に置いて自分も一口含んだ。
「たまには一緒に飲もう……」
ノアは月を見上げる。黒いフードから覗く髪がゆっくりと流れた。
風が吹いて、草葉がカサカサと揺れる。
誰も居ない静かな場所で。語り合うのは昔話か、それとも新しく出来た絆の物語か。
前へ歩き出すノアを『友人』は寂しく思うだろうか。
きっと、それは誰にも語られることの無い、二人だけの――――