イラストSS

　数多の視線の中で少女が躍る。音無く、声無く。表情一つ変えはせず。
　数多の視線の中で悪魔が躍る。音無く、声無く。表情一つ変えはせず。
　どれ程の喜劇が有ろうとも。少女は笑いを零さない。
　どれ程の悲劇が有ろうとも。悪魔は嗚咽を零さない。
　それは、雪の夜の幻想だ。二人の作る人形劇。てのひらほどの小さな世界、小さな幻想。ヨタカの奏でるヴァイオリンの旋律に乗せて、『レオン・カルラ』はくるくる踊る。
　片や、聖女と呼ばれる少女に扮し。片や、親友の悪魔に扮す。作り上げる小さな世界は、見る者全てを魅了する。
　それは、雪の夜の幻想だ。二人の作る人形劇。てのひらほどの、真ならざる幻想だ。
　けれどもそれは視線を奪い、心を奪う。固唾を呑んで見守るひとの、真なる感覚を奪い去る。耳はヴァイオリンの音を掴んで離さず、目は人形たちから離れない。夢のようなひとときに、誰も彼もが夢中になって。心は現から離れ行く。

　細い指が糸を繰り、弦の上を弓が滑る。人形たちは静かに踊り、その上に、澄んだ音が降りしきる。
　一夜限りの人形歌劇。シャイネン・ナハトの幻想を。
　どうか皆様、最後までお楽しみいただけますよう――――