イラストSS

　はじめてであったのはいつだったか。海岸線を歩いていたら、傷だらけの少女が倒れていた。だから助けた。それだけの話だ。……まあ抱き上げた時に己も熱焼けしてしまったのだが、その時感じた彼女の熱が生きているのだと思えて愛おしかった覚えだけある。
　少女は暗殺者だった。青年は探求の徒であった。そんな二人は一緒に世界を見つめる旅にでる。そして巡る二人の時間。そんな時聞き及んだ「シャイネン・ナハト」の噂。
　少女は思った。そうだ。今までの感謝を形にしよう。彼は喜んでくれるのだろうか？　人のために贈り物を送る。そんなことはじめてだった。何をあげたら喜ぶのだろう。検討もつかなかった少女はいろんな店を廻った。そしてみつけた『とっておき』。
　青年は大切な少女に贈り物をする。きっと何をあげても少女は喜んでくれるとは思う。だからこそいろいろな店を廻って、彼女にもっともふさわしいものを選んだ。
　待ち合わせのツリーの下で可愛らしく黒いコートでおめかしをしたお姫様がそわそわとしている。一年前彼女はあんな表情をしていただろうか？　ほほえましい気分になる。だから彼は一夜の王子となって彼女に気取った声をかける。
　彼らがお互いの贈り物に笑顔になるまで、あと30秒。