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メリー酩酊クリスマス(2017)
メリー酩酊クリスマス(2017)
イラストSS
古木・文(p3p001262)がScheinen Nacht(シャイネン・ナハト)で送られるプレゼントのラッピングを始めてから、もう数時間が経っていた。いいかげん疲れていたが、もうひと踏ん張りしなくては。
箱を包み終るとリボンをかけて紙袋へ入れていく。ひとつひとつ、丁寧に。当日、これを手渡した人たちの笑顔を想像しながら。
当日はこうして予約された品だけではなく、ダッフルコートを着てボンボン付きのニット帽を被り、両手にミトンをはめたほっペの赤い少女たちが何人も店を訪れて、プレゼントカードに使うスタンプや、たくさんのカラーインクとペンを買って帰ることだろう。
「あともう少しで終わるかな。よし、ちょっと休憩しよう」
店の小さなキッチンでワインを温め、ラッピング台がわりのカウンターに戻った。
ワインの芳醇な香りがひんやりとした空気の中でふぁっと立ち上り、墨と炭の香が漂うアルトバ文具店内にいつもとちょっと違ったアクセントが加わる。きっちりと締めていたネクタイに指をいれて、少しだけ緩めた。
いまごろは元の世界でも――。
(「メリー・クリスマス」)
懐かしき顔を思い浮かべ、ワイングラスを掲げる。
文はワイングラスを手にしたまま窓辺に立つと、聖夜に降る雪の静けさと美しさを楽しんだ。