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ヨハン=レームのpipiによるSS用イラスト
イラストSS
「ヨハン! ヨハンじゃない! また背がのびたんじゃない? 毛もこんなに増えて」
「人の髪をいきなりひっぱってはいけません。というか何ですか、その誤解を与えそうな表現は」
突然、髪をひっぱってきたリーヌシュカを、ヨハンはたしなめて溜息をついた。
ドラム缶にくべられている薪が、小気味よく爆ぜた音を立てている。
「何、どうしたの? 仕事がないの? 公園でうなだれているなんて、失業者くらいのものよ」
「そうではないですが。まあ、あるんですよ色々……人には誰しも」
努力は正しくなければ裏切るという。
けれど実際に結果が伴っていたならば、それも誰もが敬意の眼差しを向けるほどであるならば、その努力は正しかったことになる。喜ばしいはずの出来事だったとして、けれど目指した所が頂点であったならば、そして『そこまでは届かなかった』のだとしたら、まるで気分は違ってくる。なのに誰かへ悩みとして打ち明ければ、傲慢だと誹られるかもしれず――
ごく普通の鉄帝国人ならば、きっと『誇る』のだろうけれど、生憎ヨハンはそのようには出来ていない。
「……ふーん。じゃあ、走る?」
「どうしてそうなるんですか。いや、毎度の事か。だったら、それより膝枕してもらえます?」
「……は?」
「ひざまくら。もしかして、出来ないんですか?」
こう言えば、きっとリーヌシュカは『出来るに決まってるじゃない』などと叫びながら、強引に抱きかかえてくるに違いない。この娘はちょろい――もとい、良い奴なのだ。
よけたら取っ組み合いにでもなるだろうか。何も本気で十四歳の少女に膝を借りたい訳ではないから。
――そんな予測していると、ふいに頭を撫でられた。
驚くほど優しげな少女の眼差しと、首筋をくすぐった吐息に、思わず視線をそらす。
「硬かったらごめんなさい」
「……?」
「私のひざ」
少女はそう言って、膝をぽんぽんとたたく。
それからヨハンの髪をまとめながら、ゆっくりと膝へと倒した。
瑞々しく滑らかな肌、太ももの弾力が頬に押しつけられる。
少し甘い石鹸とドライクリーニングの清潔な香り――肌へ触れる金色の髪がくすぐったい。
「いや、ちょっと」
「あなたが言ったんじゃない。いいから大人しくしてなさい」
撫でられていると。じわじわ体温が伝わってきた。それと同時にだんだんと『僕は何をしているんだろう』という気になってくる。
「何か、すいませんね」
「いいんじゃない。たまには、こんなのも」
ヨハンは陽光を遮るように、自身の顔へ手の甲を乗せた。
ふいに『足りなかった何か』を、掴めそうな気がしている。
「どうしたの?」
「いえ――逆光が、眩しくて」
★『開眼の好機』により、クラス『エンジェル・ハイロウ』が出現しました!
SS担当:pipi