イラストSS

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　幻想・ドゥネーブ領内。
　『黒狼隊』を率いる領主の善政を思わせる活況を見せる商業区画は、常にもまして活気に溢れていた。
　それもそのはず、今日は誰もが待ち望んだシャイネン・ナハト。押っ取り刀で準備したって間に合わない、準備でも楽しみたい――そんな人々の気持ちが見えるかのようだ。
「ハンスさん、次はえーとパン屋さん！　まだ持てるよね！？」
「待ってフランちゃん、危ないって！　持てるけどさ……！」
　フラン・ヴィラネル(p3p006816)の活気溢れる声と大袈裟なほどの身振り（で当たりそうになった腕）を躱しつつ、ハンス・キングスレー(p3p008418)は紙袋を抱え直す。普段はどこか熟れた言動とちょっと擦れた態度、そしてかっちりした礼儀を忘れぬ彼がここまで取り乱すのはそうそうお目にかかれまい。あるとすれば、想定外とか予想外とか、そういう時か。
「ひゃー急がなきゃ、準備終わらないよー！」
「っちょ、ちょっと！　落ち着かないとすっ転ぶよフランちゃん！」
「落ち着いてなんていられないよー！　せっかく黒狼隊の皆とパーティーなんだから！
　返事もそこそこに腕を引かれたハンスは、蹈鞴を踏みつつ必死にフランについていく。
　その紙袋から荷物が零れ落ちるまで、あと――。


　※SS担当者：ふみの