イラストSS

　豪奢な椅子に座り、絶妙に眉根を寄せて口をきゅっと締めるリコリス。
　その周囲を取り囲み彼女にそれぞれクリスマスプレゼントを渡している幻介、鬼灯、行人、ミヅハの４人。

　今日はシャイネンナハト。輝かしい夜には楽しくパーティをしよう！　と集まったのは良いのだが、リコリスが先程から下唇を小さく噛み締めていた。
　シンプルな赤いワンピースに、白のヘッドドレス姿。クリスマスをモチーフにした衣装を着てお行儀よく座っているが、やはりその表情はなにかに解せぬと言いたげだ。

　そんな彼女の表情を知らぬまま、男達は彼女にプレゼントを差し出していた。

「リコリス殿、こちらの飲み物はいかがかな？」
「さあリコリス殿、こちらのクッキーはいかがです？」

　ワイングラスに入ったオレンジジュースを傾けて勧めるホスト風な衣装を身に纏う幻介に、骨の形のクッキーを差し出す品の良いスーツを着た鬼灯。
　差し出された２つの小さなプレゼントには、感謝の言葉は述べるが表情は元には戻らず。

「リコリスさん、こちらの飴はいかがかな？　ん？」
「あらら、なんだか不機嫌そうだな、リコリス」

　棒のついた丸い飴を不機嫌そうなリコリスの口元に差し出すスリムなスーツを身に纏う行人に、ご機嫌斜めなリコリスを楽しませようとアプローチしている１個上の先輩風を装うミヅハ。
　そんな２人の行いにリコリスはちらりと目線を送るが、機嫌は良くなりそうにもない。

　どうしてこんなにも、輝かしい夜に彼女が不機嫌なのか。それは――。

（何故ボクは……反転しない人々に囲まれているのか……ッ！！）

　そう、リコリスは周りにいる男性陣が皆反転しないウォーカーであることに解せぬ、と顔を渋っていた。
　「ちょっと反転してみない？」とよく声をかける彼女ではあるが、流石に今回集まった全員がウォーカーは想定外だったもので。

　甲斐甲斐しく男達がお世話をしても、なかなかご機嫌が良くならないリコリス。
　そりゃそうだ。男たちには彼女が不機嫌になる理由なんて、皆目見当がつかないのだから。

「リコリス殿、こちらの飲み物は如何か？」
「このクッキー、食べないのであれば俺が頂いても良いだろうか？」
「あっと、もしかしてこの味は嫌いだったかい？」
「ほらリコリス、せっかくのシャイネンナハトなんだから、もう少しにっこりと笑って笑って」
「…………」

　むすぅとした表情を浮かべるリコリスに、お世話をしてくれる幻介、鬼灯、行人、ミヅハの４人。
　輝かしくも楽しいシャイネンナハトはゆっくりと過ごされた……。


　※SS担当者：御影イズミ