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廻のあさぎあきらによる関係者1人+PCピンナップクリスマス2021
廻のあさぎあきらによる関係者1人+PCピンナップクリスマス2021
イラストSS
忘却の白。全てを忘れ去った脳髄は、恐怖も苦悩も置き去りにして平穏な毎日を与えたのか。
同じかんばせ、同じかたちを取りながらも結弦と廻は驚く程に違っていた。
天真爛漫に、何も知らぬ幼子めいた微笑みを見せる『もう一人の自分』――それは酷く妬ましい存在であった。
うらやましい、ねたましい。
その思いはじわじわと膨れ上がる。そうして、それは器から溢れるように結弦を突き動かした。
細い指先が、頸へと食い込んだ。は、と息を吐く音がして結弦は真っ青になる。白磁の指先は更に白く、細く華奢な青年の頸を締め上げている。
「め、廻さ――」
締め上げた頸からだらりと腕を下ろせば廻は身を屈めて咳き込んだ。
――自分はこんなにも辛い目にあったのに! 廻さんは全て忘れて幸せそうにして!
怨みがましい思いの上に、恐ろしさがのっぺりと塗り固められた。衝動で、その頸を絞めた己が悪魔のように見えたからだ。
「大丈夫です」
そろそろと小さな掌が伸びた。肩を撫でたその指先に結弦がびくりと身を強張らせる。廻は構うことなくその腕を背へと伸ばした。
「大丈夫ですよ。大丈夫。辛かったですね」
その声が耳朶を擽り、毀れた。頬を伝った涙は廻の肩を濡らす。
自分の辛い過去を、すべてをぶつけたって何の意味を持たないことを二人とも理解していた。
だからこそ、抱き締めて体温を分ける。ぬくもりが肌へと感じてやすらぎに変わるからこそ、それが救いになるのだから。
零れた涙が、川になろうとも。僕らは、構いやしなかった。
*SS担当:日下部あやめ