イラストSS

　白磁の肌をなぞる指先はひとのそれではなかった。暗いその場所に声音が反響する。
　揺らぐ蝋の焔は、僅かな気配を滲ませる。纏う衣の合せを開いたのは繰切の骨張った指先であった。
「――……ッ」
　触れられた箇所から灯る熱の気配に廻は息を呑んだ。這いずる蛇の如く指先は肌をなぞり、擽り痕跡を残す。
　ひとつ、ひとつが熱を灯して指先の感覚をまざまざと知らしめた。
　廻の額は繰切の肩口へと押し遣られた。感情のいろは其処に浮かばず為れるが儘に身を任す。
　あんぐりと開かれた繰切の口腔から覗いたのは吸血種を思わせる鋭く尖った歯列であった。
　頸筋に牙がぐ、と押さえ付けられる。次に感じた生ぬるい気配は繰切の舌であっただろうか――廻はひゅ、と息を呑んだ。
　痛みに続き感じられたその気配が全てを麻痺させるように身に流れ込む。まるで神経毒のように、支配をする気配。
　逃れられぬ事を示すように啜り舐めとられた血潮が頸筋からつい、と流れ落ちた。
　為れるが儘にだらりと腕が落ちる。廻の唇が僅かに震え繰切の吐息が掛かった頸筋から意識を逸らした。

　朝は、まだ遠い――


　　＊SS担当：日下部あやめ