イラスト詳細
ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフのぺいゆによる3人ピンナップクリスマス2021
イラストSS
――これは、シャイネンナハトより少し前の話。
知っているだろうか。幻想に限らず、秘密組織と呼ばれる集まりは各地に存在する。
それは大人の社交場だったり、悪の結社だったり、規模も場所も目的も様々である。
しかしそれらに共通して言えることは、『なにかを秘密にした物たちが集う場所』であるということだ。
そう、彼女たちのように。
「タント、数子。準備はいいか?」
「もちろんよ! ねっ」
「えぇ、それでは始めましょう。ベルフラウ様」
そこに集まったのは特異運命座標の3人。目の前にはテーブル。そしてそこに置かれたものを隠すように布が被せられている。
2名の言葉を受けてベルフラウが頷き、その布を勢いよく引く。
「――輝かんばかりの、この夜に!」
1人に号令に続いて2人も声を合わせてグラスに注いだ飲み物を掲げる。
布の下に広がるのは近所の有名お菓子店のケーキや無辜なる混沌全域で販売されているなど、種類は多岐にわたっている。
どれも各々がこの日のために持ち寄ったとっておきたちだ。
甘い香りはそれだけで人を幸せにする。ほら、ついつい手が伸びて……。
「うん、これは美味いな。これも美味い」
両の手にそれぞれ異なるケーキ、しかもホールケーキをかかえ、早いペースでそれを咀嚼していく。
それを見た数子、もといミーティアが抗議の声を上げた。
「ずるいわベルフラウさん! 私もそれが食べたいのに!」
言いながら手を伸ばす彼女の、そのもう片手には既にみんなが大好き、チョコレートコーティングされたドーナツがかじられている。
「あらあらミーティア様。そんなに慌てなくても、こちらにも美味しそうなお菓子はたくさんありますわよ」
ほら、あーん。と差し出されたフォークの上にはふわふわのスポンジにトロリととろけるソースの宝石(ケーキ)。
口いっぱいに詰め込まれたそれを飲み込んで、トナカイそれを一口で口に含めば、甘さの中にほろ苦さとクリーミーさの合わさった上品な味。
トッピングされたベリーの甘酸っぱさがケーキの甘さを引き立てており、脇役ながらしっかりとした存在感を主張している。
それを傍で見ていたベルフラウが、口元のフォークをそのままに、その様子を何か言いたげに見つめていた。
「……なぁ、私もそれ……」
「ふふ。えぇ、もちろんですわ。慌てずともパーティは始まったばかりですもの」
――これは、シャイネンナハトより少し前の話。
乙女たちの秘密のお茶会は、まだ終わらない。
※SS担当者:樹志岐