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アルテミア・フィルティスの黒猫による関係者1人+PCピンナップクリスマス2021
アルテミア・フィルティスの黒猫による関係者1人+PCピンナップクリスマス2021
イラストSS
●本年度唯一の男っ気
「付き合ってくれて嬉しいよ。
……君は嫌がってると思ってたから」
高層階の高級レストランは聖夜の『恋人達』に特別な眺望を用意した。
一面の窓から見下ろせる不夜城のネオンは無数に瞬く地上の星のようであり、貴公子と令嬢のフォーマルな夜を邪魔しない優雅な室内楽が店内の人々の耳を優しくくすぐっている。
「嫌という訳ではないですけど……」
「困ってはいる」
「……ええ。隠しても無理でしょうからね」
困ったような笑顔を見せたアルテミア・フィルティス(p3p001981)にヴァン・ドーマン子爵令息は「そうだね」と短く応じた。
幻想の名門に生まれた二人は先にお見合いをした間柄だ。ローレットに属するアルテミアは今は自由の剣を振る事を望んでいるのだが――
「君は僕の事をまるで知らない。
一目惚れが嘘だとは思わないけど、共有出来るって思う程子供じゃないさ。
……でも今夜に付き合ってくれたなら『ゼロ』じゃないのかな」
「べ、別に人間として嫌いな方ではないですから……」
その心算は無く、しかし言い訳じみたアルテミアにヴァンは「分かってる」と微笑んだ。
「僕は勝手に頑張るから――君はゆっくり見定めて。
僕を家からの隠れ蓑にすればいい」
「そんな事をしたら……」
「罪悪感は要らない。だって僕にも悪い話じゃないんだぜ?
そうしたら『ごっこ』でも君の隣にいられるだろう?」
「聖夜に乾杯」とグラス同士が涼やかな音を立てた。
強張ったアルテミアの口元が少しだけ緩んでいるように見えていた。