イラスト詳細
……これからオフ会なんです。この花はみんなへのお土産で。
……これからオフ会なんです。この花はみんなへのお土産で。
イラストSS
ゼシュテル鉄帝国には新しい観光地がある。首都スチールグラードの巨大な壁にめり込むようにしてそびえ立つ、複雑怪奇な大聖堂。
通称『歯車大聖堂(ギア・バジリカ)』である。
あやうく首都を崩壊させかけた大事件の元凶でありながら、鉄帝国民は事件が明けたその日から観光地化し今ではすっかりイベント会場である。
シャイネンナハトの夜などはあちこちが魔法の電飾で飾られ空には花火すらあがっていた。
「ギアバジリカ事件、ねえ……」
遅れて召喚されてきた佐藤 美咲には、はるか昔の出来事のように思える。
彼女が実感をもって知っているギアバジリカとは、『鋼鉄帝国』の首都へメタルミュージックを大音量で流しながら闊歩しロボット軍団を斬り割きながら王城へ突進したあの巨大移動要塞である。
そしてその中心には――。
「あの人たちのお墓、ちゃんと在るんスね」
巨大なショッピングモールと化したギアバジリカの中には、ひとつだけ聖堂の役割を維持しているフロアがあり、その奥には墓が建てられている。
共同墓地であり、巨大な石の塊であり、そして厳密には墓ではない。
あの戦いでまともな形で回収された遺体など、ひとつか二つしかないからだ。
美咲は(これもまたギアバジリカ内で買ってきた)花束を石の前に置き、刻まれた無数の名にめをはしらせる。
そして、指をあててなぞった。
ショッケン・ハイドリヒ――アストリア――
「どーも、オフ会しに来ましたよー」
外からは、聖歌がきこえた。
担当GM:黒筆墨汁