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【シャイネンナハト2021】──ようやっと、つかまえた。
【シャイネンナハト2021】──ようやっと、つかまえた。
イラストSS
遠くで虫の声がする。シリリリリ――という消えゆくような紙すれめいた声だ。
12月に入ってすぐの頃に聞こえなくなるはずなのに、シャイネンナハトの夜にまでなくとはずいぶん寝ぼけた虫もいたものだと……十夜 縁は窓の外へと目をやる。
けれどその顔の横に、すっと手があてられた。頬から目元までを多う手だ。
ひんやりとして、それでいて小さい。細くしなやかな指の感触が、目元へとふれる。
横を向こうとした縁を再び上向かせるためだろう、やさしく(しかし強引に)首の位置を戻す。
頭の後ろで絹のすれる感覚がした。その下にあるのは、蜻蛉の膝だ。
「勘弁してくれ」
「ええから」
声色は、未だやさしい。
「少し飲み過ぎただけだ」
「ええから、こうしとって」
頭を上向かせる時と同じだ。優しいが、有無を言わさぬ。
見下ろす蜻蛉の眼の奥に、自分の瞳の色があった。
「このまま寝ちまってもしらねぇぞ?」
「そしたら」
僅かに思案の息づかい。蜻蛉は唇の端をすこしだけ上げた。
「寝とるうちに接吻けしてしまお」
「……ぜってェ根村ねぇ」
まぁ、残念。蜻蛉はそんな風に言いながら、じっと瞳を見つめている。
虫の声が、遠くなっていく。
「十夜さん」
縁のまぶたが、半分ほどさがった。
担当GM:黒筆墨汁