イラストSS

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『1日限りのフリーDJ募集！　初心者歓迎！　皆でシャイネン・ナハトを盛り上げよう！』
　そんなチラシに誘われて、全く知らないクラブにひょこっと顔を出したのは、幸か不幸か。
　専門がギターである涼花にとって、DJは未知なる世界そのものだ。
　多くの人間でDJを回していこうという試みのライブ会場では、当然リハーサル時間も長くは取れなかった。
　本番の時が迫る。自分の出番が迫る。一通りの操作の仕方を頭に叩き込んだ程度である涼香は、けれど。

「……うん。大丈夫、です」

　出番を告げに来た会場のスタッフに、努めて冷静にそう応えた。
　――DJに重要なのは「音楽の上手さ」ではなく、「会場の雰囲気を保ち続けるスキル」だと、スタッフは最初に言った。
　それに対して、涼香は「ならば私の得意分野だ」とも思ったのだ。
「……ッ」
　サンタの帽子を被って、付け髭をして。イベントTシャツを上に着こみ、壇上に登った彼女は。
「この夜を、皆さんの心に刻み付けます！」
　普段の彼女には無い、朗朗とした声で、ミキシングを始めたのだった。

　――後に、銀髪の少女によるDJは、小さなクラブのちょっとした伝説として、常連客の間で語られるようになる。


　※SS担当者：田辺正彦