イラストSS

　シャイネンナハト――何やらロマンチックな伝承があるとは聞いたことがある。そして、家族や友人、恋人同士でイルミネーションを眺めながら夜の街を練り歩くという、定番のイベントを楽しむことも――。
　アクア・フィーリスの部屋もすっかり真冬の装いになり、カーペットの上を占拠するコタツが主役となっていた。
　コタツには欠かせない定番のみかんも置かれている中で、シャイネンナハト（クリスマス）のデコレーションが施されたケーキや、クリスマスツリー、クリスマスキャンドルなど、雑多にテーブルの上を占めていた。
　当の部屋の主は、食べかけのケーキを放置したまま、コタツの中で寝息を立てていた。穏やかな温もりに包まれて猫のように丸まるアクアは、コタツ布団の下からもふもふの狼のしっぽをはみ出して眠っている。かすかに上下を繰り返すしっぽは、アクアの髪と同様にボサボサした見た目をしていた。
　外の寒さ、イルミネーションの光だけではない世界の眩しさ――シャイネンナハトが嫌いな訳ではないが、暖かい部屋で静かに穏やかな夜を過ごすことが、アクアにとってはそれ以上の幸せなのである。


　※SS担当者：夏雨