イラスト詳細
マルク・シリングの萬吉による3人ピンナップクリスマス2021
作者 | 萬吉 |
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人物 | マルク・シリング リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ ドラマ・ゲツク |
イラスト種別 | 3人ピンナップクリスマス2021(→おまけイラスト)(サイズアップ) |
納品日 | 2021年12月24日 |
イラストSS
●聖夜の子竜伝
「良く集まった、イレギュラーズ」
聖夜の良き日。豪華絢爛、文字通り黄金に輝くフィッツバルディ本邸の大ホールで老竜の声は普段よりも幾分か柔らかい調子を帯びていた。
パーティの主人は言わずと知れたレイガルテ・フォン・フィッツバルディ。幻想(レガド・イルシオン)最大の実力者であり、ローレットの――取り分け、彼に助力する事も多い、本日集まった八人のイレギュラーズに目をかける、後ろ盾に成り得るスポンサーである。
「お招きに預かり、光栄です。公」
「この良き日に、尚、全ての道行きが素晴らしくなりますよう」
そのレイガルテの左右をまさに側近のように固めるのが黒いスーツを着用したシラスと、対照的に白いスーツを着用したベネディクトだった。
(……まぁ、慣れないけど。馬子にも衣装、ってな?)
(『懐かしい』な。この風情は。
良い思い出かどうかと問われれば――簡単に答えが出る程、容易い問題ではないのだが)
対照的なのは衣装の色だけではなく、シラスは言ってしまえば付け焼き刃。一方のベネディクトは産まれながらの高貴にて、実に慣れた着こなしである。
「いやー、流石公ですねぇ!
ご飯も美味しいし、とても素敵なパーティですし!」
「うんうん。こうしてお招きされると嬉しいしね」
ご機嫌なルル家も今日ばかりはフォーマルなドレスを纏っている。同じようにワインレッドのドレスを着こなしたスティアは『いい所のお嬢様らしく』こんな場にも良い調和を見せていた。
(こういう機会でもないと、見て回れる場所でもないのです)
如才なく微笑んだヘイゼル(ライムグリーン)は流れる時間と空間に少し瞳を閉じて考えた。元々は好奇心の発露に過ぎないが、思えば結構な肩入れをしてきたものである。まぁ、その結果がこうしての招きならば、損では無かったのは確かなのだが――
(切っ掛けは、図書館だったのですよね)
――そしてそんなヘイゼルとまあまあ付き合いの長いドラマも、奇しくも似たような事を考えていた。幻想種である彼女は高い倫理観と知性を持ちながらも『同胞以外』についての興味が比較的薄い。だからここに居るのは大本、レイガルテが気紛れでドラマに本を読ませてくれたからに他ならない。
(しかし、公も随分と御変わりになられた)
一方のリースリットは明確にここに居る理由のある人間だ。
生家のファーレル伯爵家はフィッツバルディ派に属する有力貴族であり、その子女の彼女がレイガルテにつくのは必然だった。しかしてレイガルテの人となりは父から聞かされていたものとも既に随分遠ざかっているのも事実だった。
「マルク・シリング」
「はい、公」
レイガルテがその名を短く呼べば、察しのいいマルクはシャンパンを湛えたグラスを目の高さまで持ち上げた。
「この聖夜に、フィッツバルディ派の一層の隆盛を祈って」
シラスは考える。
(……可笑しなもんだ。『こんな所』まで成り上がれるなんて)
ベネディクトは考える。
(先は誰にも分かるまいが――この手で良き結果を望めるならば)
ルル家は考える。
(絶対これも美味しいやつですよ! 遮那君にもあげたいなあ!)
スティアは考える。
(サメ料理とか何処かに無いかな?)
ヘイゼルは考える。
(これからも面白くありますように、なのです)
ドラマは考える。
(……この後、おねだりしたら公のガードも緩むかも知れません)
リースリットは考える。
(この穏やかな時間が長く続きますように)
マルクは考えた。
(何だかんだでいいポジションじゃないか? これ)
――乾杯!
揃った声と共に歓喜が散った。
フィッツバルディ派のパーティとは思えない位に――
この時間は温かみと穏やかさを帯びていた。