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未明:幸福への祈りのため水垢離
未明:幸福への祈りのため水垢離
イラストSS
まだ動物たちも眠る時間――間もなく曙となろう時刻。滝の音だけが響き渡る小さな水場があった。大人なら溺れず立てる程の、小さな池。ごつごつとした岩場で隠されるようなそこで、志屍 瑠璃(p3p000416)は一心に神へ祈りを捧げていた。
水の勢いにすっかり髪も襦袢も濡れ、その体を水滴が滑り落ちていく。同じように濡らされた髪が水流で揺れていた。眼鏡にも次第にぱたぱたと、小さな水滴が付着する。
冬の水は凍るように冷たく、しかし微動だにしない彼女はまるで彫刻かのようだ。水に濡れて張り付いた襦袢1枚越しに胸が上下していなければ、本当にそう思われていたかもしれない。最も、冬のこんな山奥まで来る者がいたらの話だが。
目を閉じている瑠璃にも、瞼越しに少しずつ太陽の光が差し込むのか感じられる。ぼんやりとしていたそれは、やがて明瞭に。寒さを溶かすように、人々へ目覚めを促すように。
だがそれでも瑠璃は、ぴくりとも動かなかった。水垢離の時間はまだ終わらない。まだ、この心を届けるには足りないのだ。
どうか、今日という日が平穏でありますように。
※SS担当者:愁