イラストSS

●The enamoured star, Bluushes with love.

　――『酷い貌』だと。駅のトイレでふと眸に入った、鏡に映る自分を視て思う。
　可愛い服でメイク直しをして居る仔が多い中で、ヨレたコートに包まれたスーツ姿の私は何だか凄く惨めになってしまって、ひとつの心の拠り所であるSNSを開いてもお得意の社畜の奇声を書き込む事すら出来ない程に疲れていた。

　足速に逃げる様に其処から飛び出て、こんな姿誰にも視られたく無くて夜の沿線をなぞる様に三駅分。

「メルぃぃぃぃシャイネンナハトぉぉぉ！」
　リアクションを返せず固まっていると、声の主である彼――星くんが、笑っちゃう程にペラペラで縫製も甘いサンタ服で『どないしたん？』と手を引いてくれて。

「おかえりぃ、残業お疲れ様ぁ。これ？　君だけのサンタさん！　みたいな？
　ってジブンどないしたんほんま、疲れとる？」
「……うん」
「ファンデ塗り直して帰って来たん？」
「……うん」
「ありがとなぁ、おつかれぇ。風呂沸いてるから入ってき」
「……うん」
「泣かんといてやぁ、今日はとっと甘やかすで」
「うん……！」



　『恋人はサンタクロース』
　――優しくなんて、厭。――


　※SS担当者：しらね葵