イラストSS

　貴方も折角のシャイネンナハトならばそれらしい格好をなさいな。

　彼女は気紛れだ。それでも、そう求められたならば応えるのが臣下と云うもの。
　そんな主君の命令にサンタクロースを思わせる衣服を着用したオウェードは「ど、どう……ですかな」と問い掛けた。
　彼の髭もあり、サンタクロースの衣装はバッチリと決まっている。
「あら、存外お似合いではありませんか。聖夜の主役にもぴったりではございませんこと？
　子供達ならば嘸喜んだことでしょうね。生憎……此処には純粋無垢な子供は居ませんけれど」
　アーベントロートのパーティー会場ではサンタクロースを信じる夢見がちな子供の姿は見られない。
　流石に三大貴族の一つ。暗殺を家業としている後ろ暗い『アーベントロート』である。
「けれど、私も『無垢な少女』のフリくらいはできますの。何かプレゼントを頂戴しても？」
「こちらを、どうぞ……ですじゃ」
　そっと差し出したのはシャンパングラス。泡の弾ける軽やかな音だけが耳朶を伝う。
　及第点だと唇を吊り上げてからリーゼロッテは笑った。
「挨拶は、お分かりかしら？」

　――Scheinen Nacht.
　　　On This Glorious, The Night!


　SS担当：夏あかね