イラストSS

●Dreaming, et cetera, of Your smile!


　乙女が女子高生と云う制服を脱いだなら。
　寒さを物ともしない赤のベアトップワンピースにケープと三角帽子。裳裾に飜る雪の結晶を引き連れて、屋根の上を軽々と飛び越え行く。
　自分がサンタは居ないって識ったのは忘れもしない十歳の時。
　彼の日願った『お父さん』は朝起きてみても靴下の中には入って居なかったし、気丈に振る舞って居たお母さんだって本当は寂しくて心に余裕が無かったのだ。
　だから次の年から今度はアタシがサンタに成る事にしたの！
　其れにまあ、思い返せば靴下の中に人間が入る訳無いのだから無茶な御願いをした――入っていても反応に困ると、一寸だけ感傷に浸って、すっかり赤くなった鼻を啜れば次の家。
　そう、其処の吃驚唖然と間抜け面した君の番！

「めりーめりー！！　クリースマーース！！！！」

　勤続六年目、未だお髭を生やすには至らない――でも、とっておきの笑顔だけなら誰にも負けない自信があるってもの。
　出来れば馴鹿と雪車が欲しいけど若い者は足で稼ぐのが此の業界の掟――え？

　業界は嘘だけど、サンタは居るよ。君が信じてくれる限り、ずっとね！


　※SS担当者：しらね葵