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加賀・栄龍の桐ノ瀬による2人ピンナップクリスマス2021
加賀・栄龍の桐ノ瀬による2人ピンナップクリスマス2021
イラストSS
●Facing the dull squint with what innocence, And what surprise!
一汁三菜、理想の夕餉。其れに加えて薫子が腕に縒りを掛けて作った見目にも愉しい品が卓子に並べば、栄龍の貌が見る見るあどけなくなって少年の様に眸を輝やかせてくれるから、作り手冥利に尽きると云うものだ。
「星だ、此方は月か! 薫子の作る煮物は美味じゃが今日は亦、特別手が込んでいる!」
子供らしく在れ無かった子供時代を送り育った軍人である彼が、無邪気に箸を手に目移りしている様を視て彼女は酷く安堵した。
『誰か』が望んだ優しい夜。輝かんばかりの此の夜でも亡くなった者は還って来ない。世界から爪弾きにされた少年に与えられたのは湯気の立ち昇る温かい食事では無く、誰かの死の上に得る温もりであったから。
「お酒をお出ししましょうか」
「いや、今日は其の……茶だな! 茶が良い!」
未だ熱い緑茶をしどろもどろに成り乍ら飲み干した栄龍の脳裏に甦る去年の誤算。
「栄龍さん、私もとうとむっつに成りました」
其れを識っているからこその薫子の些細な意地悪。
「……――矢張り酒を!」
「もう、仕方のない人」
※SS担当者:しらね葵