イラストSS

●Nor the demons down under the sea, Can ever dissever my soul flom the soul.

　船に打ち寄せる漣は、まるで揺り籠の様に。
　そして、ひとりぶんの小さな子守唄と、ひとりぶんの安らかな寝息だけが其処には在った。
　彼女が燥ぎ倒してから遊び疲れた子供の様に睡る所なんて屹度。膝を貸すアリス以外――努々想像もしないだろう。
　閉じられた瞼に、キスをひとつ。
　其れから、笑みを象る口端に、キスをひとつ。

　偶に、ゼファーの貌が張り詰めて、軀を強張らせるなんて事が増えたと思う。
　何かを警戒するみたいに。何かから怯える様に。其の度にきつく抱き締めて来ては安堵の息を吐く。
　だから、恐らく――わたしの与り知らぬ所で、わたしの身に何か起ころうとして居るのかも、と云う事はアリスにも理解出来た。
　
　――かみさまって意地悪ね。未だ、18歳の女の子なのに。

　――わたしの愛おしい、愛おしい西風。

　――大丈夫。

　――海の底深くに住まう悪霊たちだって、わたしとあなたの魂を切り離す事は決して出来ないわ。

　だから、眠れや眠れ、わたしは此の生涯に一片の悲しみも見出さない――


　※SS担当者：しらね葵