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イラスト詳細

【142】本物に抱かれてくればいいのに

作者 黒猫
人物 新田 寛治
エルス・ティーネ
ディルク・レイス・エッフェンベルグ
イラスト種別 3人ピンナップクリスマス2021(サイズアップ)
登録されているアルバム
納品日 2021年12月24日

5  

イラストSS

 シャイネンナハトの夜だけれど――あの方は相変わらず忙しそうで。
 エルスは拗ねたように唇を尖らせてからベッドにごろりと転がった。
 別に良いのだ。シャイネンナハトだからこそ夜を共に過ごしたかった、なんていうのはちょっとした我儘。
 乙女らしい可愛い我儘をあの方は知っているからこそ、エルスが独り寝をするような状況になるのだ。
 揶揄って「お嬢ちゃんには早い」だなんて。額をこつんと小突くあの方が目の前に居なくったって分かるのだ。
 寂しく何てないとエルスが取り出したのは『あの方』の抱き枕。
 とても良く似ているそれは画家が描いた最高の一品だ。抱き締められるサイズであるからこそ、小さくはあるが傍に射てくれるだけで愛おしさを感じて仕方がない。
「おやすみなさい」
 そうやって囁いて、何なら頬に口付けて――それから……。
 そんなことが『出来てしまう』ほどに近い距離にあの方(幻想)が居るのだ。
 実際にしたかは兎も角にしてもエルスは抱き枕をぎゅっと抱き締めて眠りについた。
 夢の中であの方と一緒に過ごせますように。そう願うように転た寝をするエルスは気付かない。

「……何だ、これ?」
 エルスの枕元には包帯の巻かれた腕。彼女の枕元にシャイネンナハトの贈り物を持ってきた青年は『自分の顔の抱き枕』を抱き締める少女をまじまじと見詰めていた。
 どうしたことか、幸せそうな寝顔である。頬を突けども起きる気配はない。
 明日の朝にでも「良い夢見たか」と聞いてやりたい程である。揶揄えば取り乱して大騒ぎになるのだろう。
「どうもニセモノに盗られたみてぇだな」
 これは一本取られたと青年――ディルクは喉を鳴らして笑った。
 プレゼントを置いておけば彼女も状況に気付くはずだ。
 其れまで幸せな夢の中で『彼女の理想のディルク様』と過ごして居ると良い。
 雑に頭を撫でれば「んふふ」と何とも愉快な声が漏れた。
 それ程に嬉しい夢なのだというならば、何をしたのか一つ一つ丁寧に説明して欲しいものだと明日の揶揄い言葉を考えながらディルクはその場を後にして。


 *SS担当:夏あかね

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