イラストSS

●Say hello. Say goodnight.
　貴方が居た足跡を辿るように。
　貴方の線の淵をなぞるように。

　今、貴方はどこに居ますか。

　グレーがかった空、白い雪は灰を落としたようだ。
　練達、聖夜。煌めくネオンの街を遠ざけるように、或いは喧騒を避けるように。街を歩く。
　薄くこぼした吐息は白く、かじかんだ指先は赤い。
　パーカーに腕を入れて冷気に触れさせぬように工夫してみる。恋人のひとりでもいれば握り返してくれる温い手でもあったのだろうか。冷笑。柄にもないことを考えてしまうのはきっと寒さが痛いほどだから。
　あの日頭を撫でてくれた温い貴方の手。
　遠い貴方の貌。それから、笑顔。
　会いたいと願ってしまうのは、己が弱いからだろうか。
　遠巻きにちかちかと爆ぜる極彩色の街並みから切り離された自分はまるで捨て猫のようだ。実際、間違っては居ないのだけれど。
　嗚呼、ほら。彼だって、自分と同じお一人様だ。
（……さあて、どこに行こうかなぁ）
　帰る場所は買える場所。執着した分だけ失う痛みが苦しくなると解っているから、特定の塒を持つのはなるべく避けたいけれど、今日はなぜだかよく冷える。
これだから、冬は。


　※SS担当者：染