イラストSS

●EAMD農業研究所プロモ・絶品米粉ケーキ
「いらっしゃいませ！　EAMD農業研究所プロモ・絶品米粉ケーキ。ヘルシーな米粉ケーキはいかがですか？」
「今なら特典で牛乳もついてきますよー！」
「是非見ていってくださいねー！」
　キャナル、ノバリシア、アリディアは寒空の下、サンタビキニでケーキを売りさばく。そのセクシーな装いのせいか、客足は絶えない。中には心配そうにカイロを差し出してくる客も居たのだが、これもイレギュラーズの丈夫さを見せるときだと己を鼓舞して笑ってみせた。多分引かれた。
「キャナル君、大丈夫？　寒くはない？」
「大丈夫っス！　先輩たちが頑張ってるんっスから、うちだけあったまるとかできないっスよ！」
「はは、その粋だ、キャナル！　アタシたちもあともう少し売りさばいたら休憩に戻っていいらしい、頑張ろうな！」
「はいっス！」
　がちがちと歯の根がなっていた最初に比べれば、だいぶ寒さにも慣れてきた。
　折角用意してくれた可愛らしいサンタクロースの衣装。たしかに露出は多いかもしれないが、自分にできる最大限で応えたいと願うのはいけないことだろうか。たとえそれが極寒の中のケーキ売りだとしても、自分にできることはしっかりやりとげたい。
　鍛え抜かれた肉体は震えることを許さず、いつだって笑顔で商品を売らなければと心がうるさい。
　シャイネンナハトに一緒に過ごすのは職場の知り合い。ケーキを買わんと並んでくれた恋人たちが少し羨ましい気持ちがないわけでもないが、それでも、ケーキを売りながら過ごすのだって同じくらいに楽しいに決まっている。
「ホールの……はい、4号ですね！　少しお待ち下さい！」
「こちら試食になっております、いかがですか～！」
「EAMD農業研究所プロモ・絶品米粉ケーキ。美味しいEAMD農業研究所プロモ・絶品米粉ケーキ！　家族と、友人と、恋人と、是非お食べください！」
　必死な接客の甲斐あってか、客足が途絶える様子はなく、しかしながら休憩にいける気配もない。致し方ないし嬉しい悲鳴であるといえばそうなのだけれど。夜が満ちていく度にだんだんと身体も冷え込んでいく。客の前で腕をさすったり寒いと声を上げるわけには行かないから、やはり我慢の一手である。
「EAMD農業研究所プロモ・絶品米粉ケーキ、いかがですか～！」
「残りわずかとなっています！」
「試食もありますよー！！」
　三人のサンタクロースのシャイネンナハトは、まだまだ終わりそうにない。


　※SS担当者：染