イラストSS

「それでだね、サンタをやろうと思うのだよ」

　——ふと発せられた一言。説明も何も無くただ唐突な発言を真正面に受けて、相対者の返答は。

「とうとう気でも触れましたか？ 」
「いくらなんでもそれは酷くない？」

　ドストレートに打ち返された言葉のナイフに堪らず東雲はヨヨヨ、と目頭を抑えて下を向く。

「いえ、ですが東雲様はそういったイベントの類に積極的に関わろうとする人ではありませんよね？」

　そんな下手な泣き真似に騙されてなんてあげませんよと、いつものように笑いながら平然と返すノワール。

「まあ、偶には柄じゃないことをしてみるのも良いかなぁなんて思ってね」
「なるほど。ですが私としてはどうしても明らかにしておきたいことがありましてね……」

　ニンマリと、ノワールの優しげな笑みが、そんな表現がよく似合う、ご馳走を前にした猛禽のようなそれへと変わる。

「“なぜ？”ええ、はい。なぜ私なのでしょうねぇ？」

　他の人でも良かったのでは？ と言外に告げる瞳に、東雲の返事はというと。

「……ご一緒してくれないのかい？ それはとても残念だなぁ」

　明言を避けた、まごうことなき逃げの一手であった。

「まったく、素直じゃないんですから……」


　※SS担当者：外持雨