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『とらぁくん? トラコフスカヤちゃん? あ、アルチュウ? や、やだ……たすけ――あああああ!』
イラストSS
「楽しかったですか?」
「うん、もちろん!」
屈託なく向けられるタイムの笑みに、すずなは頷いた。
「美味しいもの、たくさんあったね。よかったね、パレード!」
「電灯が、星のようでとてもきれいでしたね。あの虹の演出のところなんて、本当の虹みたいで……」
「うんうん。マリアさんもシャイネンナハトを一生懸命考えていたみたいだしね!」
「今日は特別な日ですから。特別な日になりましたか?」
「なったね! この日のこと、ずっと覚えてるだろうなあ……」
VDMランドのシャイネンパレードはつつがなく終了した。大騒ぎが去ってみると、ずいぶんとさみしく思えるような気がする。
「それにしても。あの人たちをアルコールから引き離すのはすごく骨が折れますね」
「そうだね。あれ? 本当に折ってないよね?」
「まさか。それほどやわじゃないですよ。安心してください。心得てますから。ね、とらぁ君。……とらぁ君?」
こくこくと頷くとらぁ君が、やたらと無口だったのに、すずなもタイムも、もしかすると疑問を持つべきだったかもしれない。
アルチュウとトラコフスカヤちゃんもまた、なんだかおとなしい……。
「今日はたくさん頑張ったから、つかれちゃったんだね!」
「そうみたいですね」
彼らは物言わぬ瞳で、一心にVDMランドを眺めている。
(きっと、色々なことがあったから……)
(思うところもあるんですね)
二人は、マスコットたちはきっと感傷に浸っているのだろう、と思っていた。
なら、そっとして置くのが優しさというものだろうか?
「串カツってどうして二度漬け禁止なのかな」
だから、彼らの様子を気に留めることはなかった。あとはよろしくっ、と去っていくマリ屋のメンバーにも……。
「さあ、お片付けしましょうか」
今思えば、それが間違いだった……。気が付くべきだった……。彼らマスコットの後ろに転がった酒瓶の数が、思っていたのよりも倍では済まないことを……。
見事な虹があちこちにある。
「とらぁ君!? とらぁ君!?」
「ど、どうして……」
「ひーん!!!!」
悪酔いしたマスコットたちは、はげしく虹をまき散らしている。そう、彼らは限界だったのだ。シャイネンナハトに浮かれ、多量のアルコールを摂取して、もはや限界を突破していたのだ。
リミットを越えたアルコールは虹となってVDMランドを彩っている。地獄絵図のような光景である。
「とらぁ君、とらぁ君、こらえてください」
――この日のこと、ずっと覚えてるだろうなあ……。
タイムのセリフが脳裏にリフレインする。
※SS担当者:布川