イラストSS

●シチと一緒に
「シチ、そんなに噛んだら、ぬいぐるみが……」
　シャオの静止の声はシチに聞こえる様子はない。サンタクロースのぬいぐるみを遠慮なく噛むシチは、シャオが背を撫でたのに気付くと、『どうしたの？』とでもいいたげに目をきゅるきゅるとさせて。
「……なんでもありません。寒くはありませんか、シチ」
「きゃん！」
　あたたかなベッドはもそもそと動き続けるシチの振動のみで動き続けた。
　そとに目を向ければ、きらきらとイルミネーションが煌めいているのが見えて。
「ほら、シチ。雪が降っていますよ」
「あおん！」
　しんしんと降り注ぐ雪を見せるために、シチの身体を抱き上げる。
　興奮を抑えきれない様子でシチがきゃんきゃんと鳴いた。
「外は冷えますから、やはりこちらにいましょう、シチ」
「くうん？」
「……もう少しだけ、見ていましょうか」
「わん！！」
「ふふ、嬉しいですか、シチ」
「あおーん！！」
　ちらつく雪に触れたいのだ、と窓にひっついたシチ。微笑ましいその様子に思わず笑みが溢れた。
　シチの口から離れたサンタクロースのぬいぐるみはもはやシチの視界にはない。
　一人と一匹とひとつのシャイネンナハト。しずかで、穏やかで、かけがえのない時間は、まだまだ終わりそうにない


　※SS担当者：染