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イラスト詳細

星降る夜に

作者
人物 小金井・正純
イラスト種別 シングルピンナップクリスマス2021(サイズアップ)
登録されているアルバム
納品日 2021年12月24日

8  

イラストSS

 肌を刺す冷たい空気に粟立つ皮膚を包み込んだのは白襦袢。
 その場所に漂うのは静寂のしじまのみ。周囲に人の気配もなく、佇むのは正純そのひとだけであった。
 肌に張り付く其れを気にすることなく正純は深い水の中へと歩を進めた。指先の感覚は遠離り、街の喧騒など耳朶にも滑らない。
 途惑いも躊躇いも、其処にはなく。担うのは矜持。巫女たるものの在り方がおんなの星瞬く眸には宿されていた。
 水を含んだ深い紫苑の髪先は重く、湖面へと広がった。ざぶり、と音を立てて進んだ女は星の降り注ぐその場所で立ち止まる。
 聖なる夜に瞬く星々は正純の体を甚振った。痣はその身を走り抜け、星の気配を焼き付かせる。その感覚は、胡乱におんなの意識を揺さぶった。

 ――星々よ。

 唇に乗せた音は震えていた。真白に色彩の抜けた唇は祈りを宿す。そっと、組み合わせた指先の一方は冷気でその存在感を増しているようで。
 伽藍になった血の通わぬ腕。それでも祈るために組み合わせる指先は必要だから。
 正純は祈り、願う。聖なる夜よ、鮮やかなる星々よ。星巫女は捧げるべき願いと祈りをその胸へと宿してこの地に立っているのだから。


  *SS担当:日下部あやめ

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