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隠岐奈 朝顔のキロンによる2人ピンナップクリスマス2021
隠岐奈 朝顔のキロンによる2人ピンナップクリスマス2021
イラストSS
和歌というものは、短い文章の中に考え抜かれた思いが込められたものである。
簡単そうに見えるけれど、中々に難しく。
遮那とて容易に歌えるものではない。
義兄や姉ならば美しい和歌を作る事が出来るだろうが、武芸を磨いてきた遮那にとっては殊更に難しい。
だから、今目の前で朝顔がぐるぐると目を回しているのも痛い程に理解出来るのだ。
「向日葵、そんなに無理して読まなくとも良いぞ?」
見かねて優しく後ろから声を掛ける遮那に涙目で振り返る朝顔。
「でも、遮那君はこういうのが好きなんですよね? 素敵な恋を謳った和歌」
和歌の一つでも読めねば、遮那の隣に立つなんて事出来ないと朝顔は眉を下げる。
「そうだのう。実は和歌というものは、凄く難しいのだ。一朝一夕で出来るものではない。簡単なようでいて奥深く、それ故に繊細で美しいのだと兄上も申されておった」
知識と教養、触れたものへの感受性、それをどう発露するか。
己の全部を叩きつける命の歌なのだ。
「だから、ゆっくりで構わぬよ。向日葵の心から出て来た言葉で良いのだ」
「うう……遮那君」
一つずつ、一歩ずつ。
花開く言葉を選び、書き連ねるのだと遮那は朝顔に微笑んだ。
*SS担当:もみじ