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アイザックの緲によるおまけイラスト
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ぼくの街には都市伝説がある。
夜遅くに外を出歩くと、首から上がプリズムキューブの男に攫われるのだという。
隣の家のアンティは玩具を取り上げられるのだと言うし、そのまた隣のカカチは恥ずかしい話をバラされるのだと言い、いとこのメリシェアは翌朝おねしょをするのだと言った。
皆信じているのかいないのかわからないし、ぼくはといえば……ママが夜遊びを心配してついた嘘だと思っていた。
あの、シャイネンナハトの夜までは。
ケーキを受け取りに行く筈だったと、シャイネンナハトの夜にママは困った顔をした。
店に行ってみると、うちの名前を偽って持って行ってしまった人がいたらしい。
もう一つ作ってはくれないし、お金はもう払ってしまったしで、ママは諦めて今年のケーキはなしねとため息をついたのだ。
最悪のシャイネンナハトだ。
一年で一回だけケーキを食べることの出来る日に、一体だれがそんな酷いことをしたのか。
ぼくはケーキのない夜への怒りと、ケーキを盗んだ誰かへの怒りをぶちまけるように夜の街へと飛び出した。
ママの制止をふりきって。
けれど。
家の前の通りを横切ってすぐ。
「やあ。夜更かしはいけないね」
プリズムキューブの男が、ケーキボックスを手に立っていた。
男はぼくにボックスを渡すと、手を振って帰って行く。
今夜だけは見逃してあげると指を一本立ててから。
ボックスには、ぼくの家の名前があった。
担当GM:黒筆墨汁