イラスト詳細
デートの終着点(くらい)
デートの終着点(くらい)
イラストSS
●距離
「『輝かんばかりのこの夜に』」
「……お願いが、したかったのです」
「お願い?」
「はい、お嬢様。聖夜に相応しいお願いを」
一面に宝石をぶちまけたかのような空の下。
外套の下に赤薔薇と蒼薔薇のドレスを纏った少女が二人、否一組。口付けさえも出来そうな距離まで額を寄せ合っている。
圧倒的に『絵になる』のだ。
二人とも色素が薄く、抜けるような白い肌に銀色の髪を湛えている。幻想的なその姿は絵画から抜け出した双子のようにも見える。
つまりそれは非現実めいた現実に他ならない。誰かがそれを眺めたらさぞ眼福だった事だろうが、生憎とそれが叶う機会は永遠にあるまい。
「……伺っても?」
「お嬢様は意地悪です」
クスクスと笑ったリーゼロッテにレジーナは、はにかみながら少しだけ頬を膨らめた。猫が鼠を甚振るような彼女の嗜虐性は知れていた。
奇跡の夜にかけたくなる願いなんて一つしかない。そんな事は互いに百も承知なのに。
リーゼロッテはただ甘やかにレジーナの柔肌に爪を立てる。レジーナはそのむず痒い痛みに頬を染め、お飯事のような恋の劇に一時酔うだけなのだ。
「お嬢様」
「うん?」
「愛しております。心から、お慕い申し上げております」
そんな言葉にリーゼロッテは破願した。
――知っておりますわ。