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3:それはまるで祈りのように
3:それはまるで祈りのように
イラストSS
店内の雰囲気は極めて静か。『知る人ぞ知る』という評判の通り、この店はなかなかの穴場らしい。リカナ=ブラッドヴァインは、待ち人を待つ傍ら、店内のアンティークを眺めている。
蓄音機が奏でるレコードは古いクラシック。だが、バクルドがやってきたのとちょうど、見計らったかのように陽気なジャズに切り替わった。
「先に来てたわ」
「なんだ、待っててくれたのか? ありがとよ」
バクルドの姿を見て、バツの悪そうな顔をした。「来ない方に一杯賭けようか。なんたってあの人は神出鬼没だからね」とはマスターの言。だが、リカナは分かっていた。約束事には案外、律儀なことを知っている。
「それにしても最近はずいぶんたいへんなことに頭を突っ込んでいるみたいね」
「ああ。それが放浪者の性質ってやつだ……なんたって相手は竜だ」
ますます傷跡が増えただろうか、とリカナはいぶかしむ。だが、その瞳からは冒険心は全く失われていない。
リカナは突っ込んだことは聞かなかった。バクルド・アルティア・ホルスウィング――彼のしぶとさといったら折り紙付きのものだ。
「腹がすいてはなんとやら。じゃ、飯とするか」
そうね、とリカナは思案していた。もしも次への約束を与えれば、それは少しばかりか命を惜しむためのものになるだろうか。
※SS担当者:布川