イラストSS

「眠れないのかい？」
　布団の中には自分と彼女。息遣いが聞こえてしまうそうなほど距離が近い。2人とも顔が赤いのはきっとお酒のせいだろう。
　こちらを微笑ましいものを見守っているかのような彼女の顔が気に食わない。眠れないのは誰のせいだと思っている。
「それなら子守歌でも歌おうか？」
　正直なところ彼女の美しい声で歌われる子守歌に興味はあるが子ども扱いはしないでほしい。
「なに、子供の世話はなれてるからね。……おっと、そう怒らないでもいいじゃないか」
　怒ってはいないのだが少しばかり機嫌が悪くなったところがどうやら顔に出ていたようだ。彼女が分かりやすく肩をすくめて落胆をアピールする。
　まるで母親のような接し方。距離感が近すぎる。これじゃあ寝られるものも寝られない。
　意を決して瞼を閉じる。視界が閉ざされ、彼女の発する音がよく聞こえる。そのせいでより一層彼女が近く感じられてしまう。

「――おやすみ」
　そう彼女が耳元で囁いた。


　※SS担当者：灰色幽霊