イラストSS

　──輝やかんばかりのこの夜に！
　パーティの始まりの合図は乾杯の音と共に始まった。シャイネンナハトの夜、皆が着飾り歓談と共に聖夜を祝う。そんな場にフレイとナターシャはいた。
　華やかな会場内に視線を向けて、一晩しか楽しめないこの空気に自然と頬が緩む。普段とは違うスーツ姿は代わりに心を引き締めてくれているような気がする。料理に飲み物、さてどこから手を付けようか。
　そんな物思いに耽る彼が不意に引かれる。はたと気付いた先には男物の燕尾服に身を包んだナターシャが居た。人差し指を唇に当てた彼女が言葉少なに進む先は会場の外だ。一歩外に出てしまえば、賑やかなホール内とは全く違った静けさに包まれる。
　何かあっただろうか。そう思う間も無く、彼女の手はフレイの顎を軽く持ち上げた。
「矢張り、礼装姿も可愛らしい」
　微笑む表情も余裕に満ちて。若し彼女が男性だったのなら、心揺れずにはいられないだろうと。
「あ、ああ。…有難う」
　何故か一瞬言葉に詰まってしまったのは、月の光に照らされるナターシャの表情があまりに美しかったからだろうか。
　静寂の中に小さく鼓動が弾む。シャイネンナハトは未だ始まったばかりだ。


　※SS担当者：月見里あとり