イラストSS

　舞踏会が開かれる。耳にしたレイリーは白を基調としたロングドレスを身に纏いエレンシアを待った。
　シンプルなドレスに赤を飾れば眩い金の髪をより引き立てる。
「レイリー」
　呼ばれ振り返れば紅色のドレスを身に纏ったエレンシアが何処かと惑うようにツインテールを弄っていた。
「エレンシア、待っていたわ」
「お待たせ。ちょっと、着替えに戸惑ってしまった」
　勝ち気な紅色の眸は何処となく途惑いを滲ませる。楽しげに微笑んだレイリーは「大丈夫よ、緊張しないで」とその手を取った。
　嬉しそうに笑ったレイリーを見ているだけで、エレンシアも彼女が楽しいのならば来て良かったと自然に笑みを零す。
　美しいホールも、喧噪も。少し気乗りしていなかった彼女は「一緒に踊りましょう」と誘うレイリーの微笑みを見るだけで、そんな気持ちも何処かへとやってしまえたのだ。
「勿論。エスコートはしてくれるのか？」
「私がするわ」
　くすくすと微笑んだレイリーに連れられてホールの真ん中へと辿り着く。厳かな演奏に合わせ手を取り合い踊り出せば脚は淀みなく動き出した。
　周りなんて気に止めずに――互いだけを見ていれば、それだけでいいから。
　シャイネンナハトに咲いた二つの花は綻び、楽しげに踊っていた。


　＊SS担当：夏あかね