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鳥籠のふたり
鳥籠のふたり
イラストSS
冬の朝、雪が大地を覆いつんと冷えた空気の中。
「この場所を覚えてるだろう?」
「……もちろんですわ」
忘れるはずもない、ここは二人の思い出の場所。今はもう離れ離れになってしまった彼と出会えた場所。
「……私ならベルナルドを連れてこれる」
「お気持ちは嬉しいのですが、お勤めもありますわ」
手を伸ばしたのも自らならば、離したのもまた己から。そんな自分が彼を望む資格などないと、微笑みの仮面を被ったアネモネは背中を向けたスキャットの提案に否を告げる。
「……でもっ」
「ほら、そんな顔をしないでくださいな。私なら大丈夫ですわ」
苦虫を噛み潰したかのような顔をするスキャットを、アネモネは微笑んだまま、後ろからそっと優しく抱きしめる。
「長い時間外にいては身体を冷やしてしまいますわ。そろそろ中に戻りましょう」
「……わかった」
どうしようもないまでに聖女として振る舞うアネモネの態度に、スキャットも言いたかったことを全て飲んで口を閉ざしてしまう。
「さあ、早く行きましょう」
腕を解き、スキャットを追い越して行くアネモネの背中。それを見て思わずスキャットの口から言葉が溢れる。
「でもアネモネ……あなたは本当にそれでいいのか?」
※SS担当者:外持雨