イラストSS

「ん、んん……」
　甘く蕩ける、小さな声。
　けれどそれは、一年前の今日このソファで零された艶めくものとは違っていて。

「んん……？　ねぇパパさん、この棒はどこに立てるの？」
　愛らしい呻き声を漏らし、こてりと首を傾げ傍らのヨタカに問うたのは愛し子のラスヴェート。
　もう一人の『父』であり、唯一無二の番である武器商人と共にプレゼントにと選んだのは帆船の模型。
「ほら、こっち。この絵と見比べてごらん？」
　箱を指差すヨタカのその手には、誓いの銀冠にオーロラが輝く。
　永遠を誓った二人が『三人』となったのは初夏の頃。ラスヴェートが二人の家族となり、季節が一つ、二つと巡っていた。
「あ、ここだ！　ありがとう、パパさん！」
「おやぁ、もうすぐ完成かい？　そうしたらそろそろパーティーにしようじゃないか」
　ラスヴェートが華やぐ笑顔をヨタカに向ければ、その背中越しに武器商人が顔を覗かせる。ヨタカと同じ銀冠が覗く手にはケーキが乗せられており、気付けばキッチンからはチキンの香りが漂っていた。

　――くぅ。

　小さく鳴る音に、ヨタカと武器商人は顔を見合わせる。
　初めて迎える三人のシャイネンナハトは――あたたかく、優しい。


　※SS担当者：飯酒盃おさけ