イラストSS

「くしゅん」
　なじみの小さなくしゃみを聞いて定は振り返る。鼻を真っ赤にして寒いと呟いたなじみを一瞥してから「寒いね」と俯き気味に呟いた。
「その、なじみさん」
「んー？」
「……これさ、下ろし立てでまだ着けてなくて綺麗だからさ、どうぞ」
　おずおずとマフラーをなじみへと掛ける定はしどろもどろになりながらそっと手を伸ばした。
「うん。可愛いマフラーだね」
「ほら、折角のシャイネンナハトだろ？　風邪引かせちゃ僕の目覚めも悪くなるしさ」
「うん。風邪引いたらお正月遊べなくなるぜ」
　ぶつぶつと言い訳をしながら定は自分に言い聞かせ続ける。本当はなじみに言っているつもりだった。けど、『彼女の顔を見れば』そんなこと無意味だって分かって居る。
　にんまりと笑ったなじみを見れば言いたいことも見透かせる――ああ、ほら。
「私の為に持ってきてくれたんだね？　有り難う、定くん」
　こんな都合良く美品未使用なんて持ち歩いてる訳がないと言いたげに。なじみが笑えば定は「う」っと息を呑んだ。
「これが君からのクリスマスプレゼントだね」
　――そこまで見透かされてしまうと僕が格好悪くなっちゃうだろ！
　そう叫び掛けた定に「私からもプレゼント、あるんだぜ」となじみは青年の眸を覗き込んだのだった。


　＊SS担当：夏あかね