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来年もまた…
イラストSS
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一年で一番世界がキラキラする季節、それはシャイネン・ナハト。
聖夜と呼ばれるこの夜は、空から降る純白の雪に例えられるような聖く美しいものばかりではない。
特に、年頃の男の子ばかりが集まれば――。
築柴 叶雨(p3p009756)の部屋。シャイネン・ナハトの飾りつけの中で、カラオケが始まった。
赤と緑のシマシマ眼鏡をかけた中村 直翔が、指を立てた独特のスタイルでマイクを握り、「みんなァ、盛り上がってるかぁい!」と明後日の方角に向かって吼える。
すかさず峰雪 エリスが、「いぇーい!」と相槌を打った。
二人とも完全に酔っぱらっている。
叶雨はあからさまにため息をついた。
(「世間のリア充たちは、今ごろ恋人とケーキでも食べているんだろうな。でもオレみたいな彼女のいない男たちは違う。こうして部屋でギャアギャアさわいで、夜を明かすんだ」)
シャイネン・ナハトの数か月も前から、こうなることが薄々解っていた。なんとか回避できないものかと、それなりに努力はしてみたのだが……。
ひとり白けて酒を飲んでいたら、直翔に絡まれた。
「叶雨も盛り上がってるかぁあい!」
「るっせーな、タコ」
なぜかエリスがケタケタ笑う。今のやり取りのどこが面白かったのか。やっぱり酔っぱらっているな。
「YEEEEEEE!!」
無駄にイケメンなボイスで絶叫する直翔。
「それじゃぁ一曲いってみよーかァ! 全女子に送る愛のLoveSong、『サンタさんが僕だって言ったら、信じる?』」
全女子に送るより、俺は俺を愛してくれる一人の女の子に送りたい。
グラスに酒を継ぎ足そうとしたら、直翔にウイスキーのボトルを取り上げられた。
「おい! 返せよ、酔っ払い」
「酔っぱらいはお互いさまだよ。さあ、立って、立って。一緒にどう?」
ニコニコ顔でデュエット用のマイクを差し出してきた。
こんにゃろう~、と内心で毒づいて睨みつける。
かわいい女の子からのお誘いならいざ知らず、何が悲しくてシャイネン・ナハトにやろうとデュエットせねばならぬのか。
ぐすぐずと渋っていると、こともあろうにエリスまで煽ってきた。
「んん~、もしかして酔っぱらっちゃって、喉がかれて歌えないとか?」
「はぁ?! なに言ってるんだ、俺は全然酔ってない。喉もなんともない」
「だったら一緒に歌おうよ」
売り言葉に、買い言葉。しかたがない、こうなったら歌ってやる。
マイクを取って立ち上がった。
とたん、イントロが流れ出す。ご機嫌なリズムが狭い部屋にあふれる。
エリスが笑いながらスマホを振る。
「あはは~!」
激しさあまってメロディーが崩れたが、一向に気にせず叶雨は張りのある声で、ノリノリと歌う。ふたりでデュエットしていると踊りだしたくなった。
Bパートで叫ぶ。
「踊ろうぜ!」
「YEEEE!」
「まぜて、まぜて」とエリスも踊りに加わった。
※SS担当者:そうすけ