イラストSS

●幸い映るは
　シャンシャンとベルの音が鳴り、世界が幸いに溢れる夜。
　そんな夜に、鶴喰 テンマ（p3p009368）は気を落としていた。
（……ネックレス、気に入らなかったのだろうか）
　先程姉の鮫島 リョウ（p3p008995）に送ったシャイネンナハトのプレゼントの話である。それは、彼女の隣に男として並べるようになりたくて、精一杯の背伸びをして選んだプレゼントだった。
　けれども彼女は、いつも通りストイック。着けてあげるよと申し出たテンマに涼やかな声でありがとうと返し、ちっとも『男』として意識してくれない。
　しかしそれも当然なのだと、テンマは解っている。
　ふたりは実の姉弟で、姉はテンマのことを家族として愛している。
（でも、もう少し喜んでくれたって……ん？）
　シャイネンナハトに染まる街をリョウと並び歩いていたテンマは、ふと気付く。
　ショーウインドーのガラスに映る、リョウの嬉しそうな笑顔に――。
（……よかった）
　それは、こんな素敵な物を贈れるようになった弟の成長を喜んだものかもしれない。
　けれど、それでもテンマは構わない。
　リョウが喜んで着けてくれている事の方が重要だ。
（似合うよ、リョウ）
　ショーウィンドーの中、テンマに気付かないリョウに語り掛ける。
　今はまだ弟だけれど、いつかは――。


　※SS担当者：壱花