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紅楼夢・紫月の黒猫による2人ピンナップクリスマス2021
紅楼夢・紫月の黒猫による2人ピンナップクリスマス2021
イラストSS
●おんせん!
「何や、たまにはいい事もするやないの」
紫乃宮たてはの些か偏りまくった『たまにはいい事』の判定の正確さはさて置くとして、源泉かけ流し、熱い湯船に浸かって酒の一つも嗜む事は『日本人』である彼女にとって『かなりいい事』だったのは間違いない。
「うんうん、今年は平和で何よりやわぁ」
彼女をこんな貴重な機会に誘った紫月の少し間延びした口調はのんびりとしており、ローレットとたてはの普段の(面白くも)のっぴきならぬ間柄を思わせないものだった。
「もう年の瀬やしねぇ。一年の疲れを落とすにもいい頃やしねぇ」
「……せやね。ですから今日はキャラ被りも置いといてあげます」
黒髪和装で日本刀持ってたり京言葉なら全て『被り』で片づけるたてはの無茶に紫月は「おおきに」と軽く笑った。
外気は冷たく、目の前にはちらちらと雪が舞っている。
「――」
「――――はぁ」
「生き返る……」
アレでも二十代半ばのたてはは心底から呟いた。
そして、ふと誰に言うともなく付け足すのだ。
「……何か、『育った』気がするし。
心なしか、今日のうちは最強な気もするし……」