イラスト詳細
聖夜の二人
作者 | くらい |
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人物 | ルーキス・グリムゲルデ ルナール・グリムゲルデ |
イラスト種別 | 2人ピンナップクリスマス2021(サイズアップ) |
登録されているアルバム | |
納品日 | 2021年12月24日 |
イラストSS
――シャイネンナハトの夜。
その特別な日にいつもよりほんの少しだけお洒落をして、いつもよりちょっと豪華な食事をして、いつも通り連れ添った一組の夫婦が街道を歩く。
今年は例年よりも温かいとはいえもう年の瀬。二人の吐く息は白く、頬も少しばかり紅潮している。
「寒くないか?」
「ああ、これがあるから暖かい」
夫へ微笑むルーキスの肩には濃紺のパーティドレスと少々不釣り合いな男物の上着。これは先ほど食事の後に店を出たところでそっとルナールが掛けてきたもの。愛する夫の温もりは何物にも代えがたい。
「ルナールは寒くないか? 私に上着を渡してしまって」
「寒くはないけど……気になるならこうすればいい」
そっとルーキスの肩を抱き、自らの方へ引き寄せるルナール。二人の身体が重なって、じんわりと相手の体温が伝わってくる。
いつも通りの夫婦ではあるが特別な日にはこういうのも悪くはない。二人の歩調はゆっくりと、今を噛みしめるように静かに歩く。
今夜の食事の感想や、新年に向けた準備など取り留めのない会話の続く帰路の中。それに気づいたのはルーキスだった。
いつの間にか羽織った上着に白く綺麗な結晶がぽつぽつと。
「ルナール!」
振り返りながら夫の名を呼ぶが興奮したせいで少々声が大きくなった。
「雪か」
気がつけばちらちらと舞い落ちる冬の証。この調子なら積もることはないだろうがそれでも今年の初雪に変わりはない。
伸ばしたルナールの掌の上、いくつかの結晶が溶けて消える。
「シャイネンナハトに初雪とは縁起がいい」
「ふふん、そうだな。日頃の行いのおかげかもしれないぞ?」
「いつも感謝しておりますとも」
笑い合う二人の歩みはまた一段とゆっくりと。降り注ぐ雪を眺めながら歩き続ける。
もう半分もない特別な日の帰路を少しでも長く続けるために。
特別な夜が終わっても二人は何も変わらない。
今年も初雪を一緒に見たように、来年も、そのまた来年も一緒にいるのだろう。
比翼の鳥のように夫婦はいつも連れ添って。連理の枝のように共に在る。
※SS担当者:灰色幽霊