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イラスト詳細

この汚れた聖歌で何者を救うのか。

作者 梅村
人物 コルネリア=フライフォーゲル
クラリーチェ・カヴァッツァ
イラスト種別 2人ピンナップクリスマス2021(サイズアップ)
納品日 2021年12月24日

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イラストSS

 今日は聖夜。とはいえ、サンタやプレゼントが全てではない。施し以外の何か、例えるならば全ての物に安寧あれという祈り、遠き神へ導きを求めんとする修道女達の歌声もその一つだろう。
 二人が偶然立ち寄ったのは既に誰も居ない、放棄された様子の教会だった。街中の教会には敬虔な教徒達が祈りと願いを捧げに訪れていたようだが、此処は人の気配一つ落ちてはいない。

「誰も居なくなってそのまま朽ちたのかしら」
「かつては此処にも沢山の人が訪れたのでしょうね…」

 埃を被る椅子、隙間から生える草木、所々剥がれ落ちたステンドグラスは内部へ光を通すのみ。
 更にその奥には大きなオルガンが鎮座していた。見るからに年代物、所々塗装の剥がれも伺える。クラリーチェはそっと近くまで足を勧めると、一つ二つと鍵盤に触れた。

「……あら、このオルガン調律がされていますね。ほら」

 二人だけの教会で古びたオルガンは正しい音を返す。多少鈍さはあれど、それもまた味となって低く、そして荘厳に響いた。近くまで来ていたコルネリアも興味深そうに眺めてからふと笑みを零す。

「なら、少し弾いてみたら?暇つぶしにゃ丁度いい」

 声に応え、クラリーチェは一番耳馴染みのある聖歌を奏で始めた。調律はされているとはいえ使われていなかったせいか多少音に難はある。しかし、彼女の腕を以てすればその程度問題の一つにもならない。
 月光が照らすステンドグラスの下、コルネリアは両手を合わせて小さく息を吸った。オルガンに合わせ響き渡る彼女の歌声を聞くものは、この教会にはクラリーチェの他誰も居ない。
 朽ちた教会に響く聖歌が一体誰を救うのか。これもまた、この夜の為にある詩だった。


 ※SS担当者:月見里あとり

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