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九重ツルギの糸巻茜によるおまけイラスト
九重ツルギの糸巻茜によるおまけイラスト
イラストSS
●We had what the others, All crave and seek for.
あの子は、痛い思いをしていないかと。不憫ではないかと。そう想えば気持ちは逸り、ツルギは腰の剣に手を掛ける。
嗚呼、ほら早く会いに行こう――そう、焦る彼が全てを言い切る前に、イズルの細い人差し指が其れを封じて、脣をなぞる。
『よそ見しないで――シャイネンナハトの夜くらい、他の誰でもなく私だけを見て欲しい』
甘ったるくて、けれど清涼剤の様にすぅっと軀中に沁み入る聲でそう強請られれば、其の熱は触れられた指先から、耳を伝って、脳が茹だり――ぐらつく思い。
「そんな風に言われたら、もう……イズルしか見えなくなるに決まってるじゃないですか……」
「其れが私の望みだから、ね?」
うっそりとしてツルギが伸ばした腕に納まったイズルの儚げな貌は、眸は見えずとも喜色に染まって。
「……――愛しています」
「ええ。私も」
深く、深く、息を吐く。張り詰めて居た絲が、解けて行く。互いの体温を移し合えば、はらはらと募る雪も、もう冷たくない。ふたりを守っていた大きな傘だって、其れより先を望び踏み込みたくば、無粋な代物であった。
※SS担当者:しらね葵